聖徒たちを整えて、奉仕の働きをさせキリストのからだを建て上げるために  エペソ4:12


上巻・中巻・下巻3分冊


フランク・E・ペレティ
セット価格 5355円 (税込)700円クーポン券付

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私たちはこの本を推薦します

フランク・ペレティは、現在活躍しているすべてのクリスチャン作家の草分け的存在だ。彼がドアをこじ開けてくれたおかげで、今のわれわれの働きが存在する。
          「レフト・ビハインド」シリーズの著者/ジェリー・B・ジェンキンズ


霊的戦いのイメージがよくわかるようになりました。お祈りの仕方も変わってきています。 (30代主婦)
 

「この暗闇の世界」って、とても面白いです。あっという間に読んでしまいました。「悪霊との戦いは、本当にこうなんだろうな」とか「祈ることが、こんなに大事なんだな」とか真剣に考えさせられます。  (40代会社員)

小説ならではの豊かな表現力で、霊的戦いについて具体的なイメージと洞察を与えてくれます。なかでも天使と悪魔の
やりとりは、とにかく“おもしろい!”のひとことです。祈りの力を改めて確信しました。  (40代伝道師)


息を呑むストーリー展開。身近に感じた覚えのある悪しき存在≠フ舞台裏を描いたようなおもしろさ。そして、詩篇91篇に出て来る天使の守り。それから祈りと賛美の大切さ。この小説を読んで、霊的戦いを身近に感じるようになりました。 (40代会社経営)


第一章

  

 満月の夜だった。日曜日の夜も更けた頃、作業着を着たふたりの影が、小さな大学町アシュト

ンに隣接するハイウェイ27号線上に出現した。背が高く、少なくとも七フィート(約2m10cm)はあ

るように見えた。筋骨隆々として、完璧ともいえる肉体をしていた。ひとりは黒髪で、鋭い感じの

印象を与え、もうひとりは金髪で、たくましい感じだった。彼らは、30マイルほど離れた場所から

アシュトンの町を眺めていた。店先からも、表の大通りからも、裏通りの小さな路地からも、どん

ちゃん騒ぎの音が聞こえてくる。ふたりはしばらくのあいだ、その奇妙ともいえる騒々しい喧噪〈

ルビ けんそう〉に耳をを傾けていたが、やがて歩き始めた。


 時は、「アシュトン夏祭り」の真っ最中だ。この毎年恒例の夏祭りのあいだは、みな大いに羽目

を外し、町中が喧噪〈ルビ けんそう〉と混乱の渦の中に巻き込まれる。しかし、この夏祭りには

、それなりの意味があるのだ。長い春学期の授業に耐え、やっと夏休みを迎える800人余りのウ

ィットモア大学の学生たちに対して、「お疲れさん」という町の人たちの慰労〈ルビ いろう〉の言

葉でもある。あるいは、「新学期になったら帰って来いよ」とか、「幸運を祈る」とか、「君らがこの

町にいてくれて楽しかったぜ」といったメッセージも込められているのだ。夏休みには、ほとんど

の学生は荷物をまとめて帰省するのだが、だれもがこの祭りに参加するために、少なくとも祭り

の時までは町を離れたりしない。学生たちは、祭りのさまざまな催しやストリートディスコ、遊園

地の乗り物、五セント映画、あるいはその他〈ルビ た〉どんなものでも、スリルと興奮に満ちた

遊びを思い思いに楽しむ。祭りでは、思いっきりばか騒ぎをするのが習わしだ。酔っぱらったり、

妊娠したり、人を殴りつけたり、金を巻き上げたり、具合が悪くなったり。一夜にしてこれらすべて

の事が起こるのが祭りだ。

 町の中央では、コミュニティ活動に積極的なある地主が、旅回りの一座に空き地を開放して、

遊園地の乗り物やブースや簡易トイレの設置を許可している。その乗り物は、昼間見るとくたび

れて見えるが、夜見るとすごくきれいだ。古びて錆びついた乗り物も、夜の明かりに照らされると

、錆がいろいろな色を醸しだし、案外見栄えがするものだ。マフラーのないトラクターエンジンに

よって動くため、どこからともなく聞こえてくるカーニバルのにぎやかな音楽に負けないくらいの

爆音をがなりたてている。だが、言うまでもなく、こんな生温かい夏の夜には、綿菓子製造器の

中でぐるぐると巻き付けられる綿飴のように、群衆は通りに繰り出し、うろうろしながらあちこちで

遊びに興じている。だから、ゆっくりと回る観覧車は、あまり人気がないようだ。あまりにもゆっく

り動くので、どことなく乗る人をためらわせるところがあり、乗り手が少ないためさらに客が少なく

なる。そのため、遊園地の客や道行く人たちに、乗り物代に相当するクーポン券を手渡したりし

ていた。そうやって、観覧車の二、三週分の客は確保されていたようだ。メリーゴーランドは、ま

ぶしいほどの明るい照明を受けて回転する派手な円形の乗り物だ。ここの馬たちは、ペンキが

剥〈ルビ は〉げてしまったり、体の一部が欠けていたりするけど、いまだに元気よく、古くさい蒸

気オルガンの奏でるメロディーに合わせて飛び跳ねている。人々は、祭りのために急ごしらえし

た夜店の並ぶ大通りを歩きながら、籠〈ルビ かご〉をめがけて野球のボールを投げつけたり、

灰皿に一セント硬貨を放り込んだり、風船にダーツを当てて割ったり、風に向かってお金をばら

まいたりする。そんな行儀の悪い祭りの客たちに向かって、夜店の店主たちは、「へい、いらっし

ゃい。いらっしゃい」と威勢〈ルビ いせい〉良く客引きをする。

 ふたりの背の高い訪問者は、この喧噪〈ルビ けんそう〉のど真ん中で、静かにたたずんでい

た。大学生も含めて、人口わずか一万二千人の町に、いったいどこからこれほどまでの人が集

まってきたのか、不思議に思いながら。ふだんは閑静〈ルビ かんせい〉な田舎町が、祭りの日

には一変して、にぎわいを求めてどこからともなくやって来た人たちによって肥大化した群集の

溜まり場へと変化する。通りも居酒屋も、店の中も裏通りも、駐車場もみな人で溢〈ルビ あふ〉

れ、無礼講で〈ルビ ぶれいこう〉何をしても許され、違法なことまでも見過ごされているのだ。警

察も全力で取り締まりに当たってはいるが、乱暴をはたらいて器物を損壊した酔っ払いや、通り

で客引きをしている売春婦を逮捕しても、氷山の一角にすぎない。その何十倍もの無法者たち

が、町をうろついているのだ。祭りも最後の夜となりその勢いも、今まさに最高潮に達しようとし

ていた。まるで、決して止みそうもない大嵐が吹きあれているかのようだった。ただその終わりを

じっと待つしかない。すべてが終わったら、後に残されているのは、残骸と大掃除だけだ。


 ふたりの訪問者は、大勢の人でにぎわうカーニバルの中をゆっくりと通りながら、人々の会話

に耳を傾けたり、人々の行動をじっと観察したりしている。どうやら彼らは、この町を調査してい

るようだ。だから、あちこちをきょろきょろと見回したり、前後左右のあらゆるものをゆっくりと時間

をかけて観察したりしている。通りを行き交う雑踏〈ルビ ざっとう〉は、まるで碾き臼〈ルビ ひき

うす〉のように、四方八方からふたりを挟み〈ルビ はさ〉込んだ。それに加えて、洗濯機の中でも

み洗いされている衣服のように、雑踏〈ルビ ざっとう〉がふたりの周りをぐるぐると巡り、身動き

のとれない渦の中で、予期せぬ場所へと押し流されていくのだった。もみくちゃにされながらも、

群集をじっと見つめていた。だれかを捜しているらしい。

「あそこだ」と、黒髪の男が言った。

 ふたりとも彼女を見た。その女性は、若くてとても美しかった。だが、どことなく落ち着きがなく、

あたりをきょろきょろ見回していた。 カメラを手にし、唇を硬く閉じて、「何事にも動じないぞ」とい

った表情を見せてはいたが、とても不安げだった。

 ふたりは、急いで群集をかき分けて、彼女のそばに立った。しかし、彼女は彼らには気づかな

かった。

「ほら、あっちを見てみたらどうだい」と、黒髪の男が言った。

 たったそのひと言で、彼女の心が動いた。彼は彼女の肩にそっと手を置いて、夜店の一角に

あるブースへと案内した。彼女は、群集を押し分けながらそのブースへと近づいていった。そこ

では、十代の若者たちが互いに卵を投げ合ったり、ダーツで風船割をしていた。彼女の興味をそ

そるようなものは何もなかった。その時、ブースの裏手に密かに動く影を見た。彼女はカメラを撮

る準備をして、静かに近づき、すばやくカメラを構えた。

 カメラのフラッシュがとらえたのは、ブースの裏手の木の前を、ふたりの男が足早に急ぐ姿だった。





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